大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和27年(う)2661号 判決

N弁護人の控訴趣意第二点及びY弁護人の控訴趣意第一点について。

原判決が判示第一の(一)の事実の日時を昭和二十七年一月五日頃と判示したこと、また、原審第四回公判(昭和二十七年五月二十九日)において、右の事実に当る起訴状記載の公訴事実第一の事実について原審が検察官の訴因変更の申立にもとずき、昭和二十七年一月五日頃と記載されてあつたのを昭和二十六年十二月下旬頃と変更することを許したことは、いずれも所論のとおりである。

おもうに、特別の事情のない限り、「何日頃」といえば、その示された日その日だけでなく、その日を中心として前後の数日をも含めた時を指すものと解するを通常の例とするので、昭和二十七年一月五日頃といえば、その一月五日の前の数日、すなわち昭和二十六年十二月下旬頃をも含めた時を指すものと解しても敢て不当とはいえないのであるから、右昭和二十七年一月五日頃を特にわざわざ昭和二十六年十二月下旬頃と変更するまでもなかつたように思われる。しかし原審は右の如く訴因の変更を許した。許した以上、旧訴因は消滅して新訴因が登場したのであるから、原審は更に訴因に異動を生じない限り、変更された右訴因にもとずいて判決するの外はない。ところで、その訴因に示された日時は昭和二十六年十二月下旬頃というのであつて、同じく「頃」を附加してあるところからいつて、この日時も亦右十二月下旬そのものだけでなく、その前後の数日をも含めた時期を指すものと解することができるので、昭和二十七年一月五日頃という時点をも含むものとして解する余地を残しているものといわなくてはならない。そこで原審が変更された訴因にもとずいて原判決をするに当り、判示第一の(一)の事実の犯時を昭和二十七年一月五日頃と判示し、そのため、該判示が変更前の訴因に示されたそれと同一に帰し、恰も訴因の変更を無視したような観があるけれども、もとよりさように見るべきものではない。原判決は右にいうたところと同様の見解の下に当然許さるべき措置に出たまでである。しかも、右判示第一の(一)の事実は、その犯時たる昭和二十七年一月五日頃という点をも含めて、すべて原判決挙示の証拠によつて優に証明されるので、原判決の右措置には何等咎むべき廉はない。

従つて、原判決の右措置を目して刑訴法第三百十二条に違反すると非難する論旨並びに同法第三百七十八条第三号に該当すると主張する論旨は、いずれも理由なきものとして排斥するの外はない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!